先日も大阪でDV殺人がありました。このような事件が起これば、DVの認知件数が増えてるということと合わせて、DVが大きな社会問題だと喧伝したい人たちは「三日に一人の妻が殺される日本」とキャンペーンをはります。その目的は何でしょう。この主張は正しいのでしょうか。
確かにDVの認知件数はDV法ができて以来、増加の一途です。がこれがDVの実態を表しているのか、冷静に見る必要があります。認知件数とは統計上の数字ですが、警察に通報され、対応した件数です。ですからキャンペーンが浸透し何かあると通報する人たちが増えれば認知件数は増えます。
では、実際に夫婦間の傷害・殺人事件は増えているのでしょうか。これはこの10年ほどの変化を見れば減少しているのがはっきりとわかります。おおよそ、二百件から百五十件に(H15〜25)に減少しています。さらにその夫婦間殺人の被害者の性別を見てみると、被害者はおおよそ妻65% 夫35%・・確かに三日にひとり妻が殺されているけれど、五日にひとり夫が殺されているのです。(毎日男が50人(女はその約半数)ほど自殺していることと比べるとその社会的重要性の軽重がわかることと思います。)
そして何より、傷害・殺人事件の加害者は親族が半数以上、男女にかかわらず、危険なのは家族、という現実です。愛し合い、いたわりあうべき家族がどうして 事件を起こすのか・・・
そこには、暴力に至る怒りや怒りに至る関係の悪化の原因があり、それが理解できないと、防止対策も適切な支援も考えられません。
けれど、DV男は危険、何をするかわからない、逃げろ別れろ関わるな、という事実に基づかない認識で支援して、解決するのでしょうか。防止できるのでしょうか?ありえない話・・・だと私は考えます。
むしろ、一方的に危険なDV男と誤った対応をすれば、誰でもその理不尽な行為に対して怒りがわくのも当然ですし、その怒りが相手や相手を支援した援助者に向かうのも当たり前。
男=加害者=悪者という暴力的な決めつけは問題を余計に悪化させかえって被害者を危険にさらすことになってしまいます。その挙句のDV殺人といえなくもありません。
性別で善悪を割り振るのではなく、事実を冷静に中立的な立場の人が調査し、証拠に基づいて判断する。さらにこじれた元々の原因に対して双方に対して修復的な支援を行うことで、感情のもつれを解きほぐし、適切な関係(それは離婚も含む)を再構築することも可能です。
けれど、加害者対応の理論もスキルも実践もないこれまでの援助者は被害者を分離することしか支援のノウハウを持たないし、その支援で組織を維持するには新たな被害者の存在が必要です。
適切な加害者対応をしてDVがなくなれば被害者支援の方たちは困るという構造にあります。DVがなくなっては困るのでしょうねぇ。ですから加害者対応が広がらないよう、DV男は危険、プログラムは無意味という言説を繰り返すしかありません。そのために事件が利用され、キャンペーンが張られます。せめて読者のみなさま、歪んだキャンペーンに乗せられないでねー。
笑い溢れるある日の男の非暴力グループワーク。女性もいたりして(笑)